2017年度母親講座・第18回『(本人・父・母)みんな退行したい』。
本日のテーマは『(本人・父・母)みんな退行したい』。
ユニークなタイトルと思われるかもしれませんが、実はかなり深いテーマだったりします。
そんな理由か、今回の母親講座はいつもよりも多めな参加人数でした。
「退行」と言うと、皆さんはどんな印象を持つでしょうか?
- 赤ちゃんがえり
- 幼児性
- 育ち直し
- 生き直し
- 生じたら心配なもの
- なんだか怖いもの…
心理学辞典には以下のように示されています。
退行:
「防衛機制(無意識に起きる心を守る働き)の一つで、以前の未熟な段階の行動様式に逆戻りしたり、未分化思考(成長に伴い人間は複雑な思考=分化度の高い思考になる。つまり未分化は幼いと言う意味。)や表現の様式になること」。
例)
子どもが、兄弟の誕生後に夜尿や指しゃぶりが再発され、親の関心を向けようとすることなどは顕著な例。
大人もショックなことがあると布団の中で丸まって寝たりしますよね。
つまり、退行は「なんらかの強いストレスや葛藤に直面した時に、安全だったりした段階・テーマとなるような発達段階に戻り、欲求を満たそうとすること」であるため、その人に必要で生じていると心理学的には考えます。
ひきこもりにおいては、この「退行」の視座を親がしっかり掴んでおくことが非常に重要なのです。
何故ならば、(ひきこもり回復においては)濃淡含めた退行は必ず生じるものだから。それでありながら、精神医学領域では退行は「悪質なもの」として扱われることが非常に多いのです。
そして、心理支援領域でも「歓迎されないもの」として扱われているのが現状かと思います(治療的退行・構造的退行として心理支援に導入されているのは現状ではごく一部です。)。
その理由が、残念なことにリスク回避にのみ焦点化されています。そしてその結果、「適応」にのみターゲットが絞られる…必要で生じている心の問題は据え置かれるのです。
強調したいのは、“ 必要で生じている退行 ”の意味が見過ごされている事実です。
本日の母親講座では、親が退行の意味と付き合い方をしっかり勉強されたケースが話されました。深く長い不登校から連結したひきこもり状態から就職適齢期に間に合い、今現在も会社で一目置かれながら活躍している青年の実例です。
親が、「我が子に起きていることには、ちゃんと意味がある」と支え、取り組んだからこその結果だと思います。
もちろん、“ 派手な退行 ”なく復活していく青年もいます。ただ、回復したケースに共通しているのは親自身がわが子の問題に能動的に取り組んだと言う事実です。
SCSは支援20年以上。
その歴史の中でSCSは『退行』の理解と取り組み方のメソッドを確立しております。これは、実際に生じてくる様々な問題に対する適切な行動・対処方法・声かけを含む詳細なメソッドであり、稀有な知見だと言われおります。
だからこそ、SCSを巣立った青年らは力強く、自己実現の道へ向えるのだと私は思うのです。
発達心理学の大家、エリク・エリクソンはこう言ってます。
「人間は(連続する発達段階の中で)過去の解決されなかった葛藤や緊張に向かい合う日が必ず来る」。
整体の創始者である野口晴哉氏もこう言ってます。
「人間は強いストレスにさらされると退行する…」。
わが子の問題に最初に取り組むのは、親からです。
そのあと、子が自分自身の問題に取り組めるようになるのです。
スタッフ 桝田智彦